美しいミニマルな部屋に来ています。もともと畳ベッドがあった部屋に住んでいたapartment301さんが引っ越して、新居のルームツアーをさせてもらうことになりました。入居して1ヶ月ちょっと。これ、賃貸なの?
というくらいおしゃれな部屋で、ツッコミどころがいっぱいあります。
apartment301さんは、僕がもともとInstagramで見ていた、持たない暮らしをされている女性です。きっかけは熊本の震災(この部屋も熊本です)。被災してモノを減らし始め、今ではめちゃくちゃインテリアに凝るように。
ただモノが少ないだけじゃなく、美しい。なぜこれを残したのか、なぜこの配置なのか、インテリアのこだわりも含めて聞いていきます。
実はここ、賃貸だけどリノベーションしています。フルリノベーションとまではいかないそうですが、一般の方の感覚ならフルリノベと思うくらい変わっている。賃貸とマイホームの間です。
そもそも賃貸をリノベできるのか、予算はどう交渉したのか——マイホームは持ちたくないけど家のインテリアにはこだわりたい人は、参考になると思います。
玄関:靴箱を撤去して、モルタルの段に靴5足を並べる
玄関、靴がむき出しで置いてあります。靴箱がない。一般的には玄関を入ったところに腰くらいの高さまで靴箱があるものですが、リノベ前にあった靴箱は撤去してもらったそうです。
「どうしましょうか」と最初に相談したときに、箱はいらないんじゃないか、と。靴箱があった部分に段差があったので、その高さを揃えてモルタルで打ってもらい、その上に靴を並べれば靴箱になるんじゃないか、という発想。
ギャラリーのようにそのまま置いてあります。
持っている靴は全部で5足。ニューバランス大好きで2足(微妙に違う)、低いほうはレインブーツで、奥が普通のブーツ、サンダルが1足。普段スニーカーしか履かないので、5足で事足りる。
数を減らしておかないと、「これをなくす」という発想にならないんですよね。普通は「箱をどうやってたくさん並べようか」「箱じゃなくても棚を付けようか」という話になる。
「この幅があれば私の持ち靴は全部入る」と思えるのは、ミニマリストじゃないと無理だと思います。
椅子にも小物入れにも見えるこれは、もともと「靴を履くためのスツール」としてデザインされたもの。座って足を乗せて靴紐を結んだり、靴磨きの道具を置いて腰掛けて靴の手入れをしたり。
ここに玄関まわりで使う鍵、靴べら、宅急便の受け取りに使うハンコ、よく持ち歩くリップ。玄関で使うものを玄関に置く、この動線がいい。しかも「置いてる感」が全くない。
ドアにはスマートロック。前の部屋の玄関で使っていたピーター・アイビーの照明を、あえてここに付けたそうです。いいものは残しつつ。ハートの石もかわいい。ひとつひとつがアート作品みたいに散りばめられています。
洗面と洗濯機:壁を壊して洗面を新設。収納も、タオルハンガーも、カーテンもない
玄関を入ってすぐが水回り。もともとはこの辺に壁があって洗面があり、窮屈な感じだったそうですが、壁を壊して、あえて壁を少し延長した形で新たに洗面を取り付けた。
洗面ボウルの下の収納とか、タオルハンガーとか、普通は付いているものが一切ありません。もともと剥き出しだったネズミ色の塩ビ管の配管は、白く塗っただけでそのまま。
面白かったのが洗濯機置き場。「念願の室内洗濯機置き場」です。以前の部屋はベランダだったので、365日、雨が降ろうが雪が降ろうが外に出なければいけなかった。部屋の中に作ってもらえてすごく嬉しかったそうです。
そしてここもカーテンがありません。目隠しシートでもなく、剥き出し。付ける気もないそうです。
このラックは収納のワゴン。ここに全部まとめてあるので、洗濯のときは洗濯機の前へ、洗面で使うときは洗面へ、お風呂のときはお風呂の前へ持っていく。ワンルームで遮る壁がないから、モノを移動させやすい。
下着とパジャマを入れておいて、お風呂から上がるときにお風呂の中から取れるようにしておく。オールインワンで全部入っている——かなり減らさないと入りません。下着は2セットだけ。1セットは着ていて、もう1セットがここに入っている。
毎日洗濯するのでそれでいい。
こっち側がスキンケアで使うもの、ここが歯磨き関係。歯ブラシを洗面に置きっぱなしにはせず、使うときに出して、終わったらしまう。移動させられるから手間じゃない。一番下はシートマスク。
100枚セットで届くものがぴったり入って、「入れながら感動しました」というシンデレラフィット。毎日使うそうです。
ちなみにこの日もノーメイク。apartment301さんは前からそうなんですが、一切化粧をしない人。スキンケアはあるけどメイク用品がない。今年46になるそうです。
「元の肌をきれいにしておけばいいんじゃないかと思って、食べ物とスキンケアはちょっと頑張るけれど、メイクは一切やらない」。100か0か、の世界。
ドアのないお風呂、目の前が壁のトイレ
お風呂場、まずドアがありません。もともと付いていたそうですが、「最終的になくていいんじゃないか」と。壁が1枚付いているだけで、その立ち上がりで湯船を作っている。ビフォーの写真と比べると劇的です。
だいたいルームツアーをやるとお風呂場はモノが置いていないから突っ込むところがなくてすぐ終わるんですが、初めてこんなにお風呂場に感動しました。必要最低限使うものは窓のところに置ける場所があるのでそこに。
お風呂の栓にチェーンがない。棚もなければ鏡もない、タオルバーもない。本当に何もない。鏡がないから水垢の掃除もしなくていいし、鏡の汚れの心配が全くない。その代わりに、普通の賃貸には絶対付いていないオーバーヘッドシャワーが付いている。
ホテルみたい。
その横がトイレ。まだ工事前で、目の前に壁がある工事現場みたいな状態ですが、ドアを開けていれば大丈夫。タンクレストイレです。タンクレスじゃなくてもよかったけれど結果タンクレスになった。見た目がかっこよくて高さが出ない。
「タンクレスは省スペースになるわけではなく、ひとまとめになるだけ」というのもよくわかったそうです。
見せるクローゼット:「隠すから使わなくなる。美しくなくなったら手放す諦めもつく」
お風呂とトイレから見た先が、この部屋のわりかし大きな収納のひとつ、服を掛けるスペース。今の季節に着ている服がここに掛けてあって、冬物はクリーニングに預けている。それでも数えたら20着はない。
僕もいろんなミニマリストさんの家に行っていますが、服好きの人だと200着くらい持っている人もいる。かなり厳選されています。セレクトショップみたいに、少数の服が置いてある。
「もともと収納するというよりは、ディスプレイする感じでモノを置きたい。特にお洋服はそう置きたいという希望がすごくある」。しまうというより見せる。アートが置いてあったり、カバンもそのままディスプレイしてある。
隠すから使わなくなる。見せておけばやっぱり使うし、傷んできたものを見せたいとは思わないから、美しくなくなったら手放そうという諦めもつく。隠してしまうと見えなくなるから、その境目があやふやになってモノが増えていく。だから、できるだけ見せておけるようなものを持ちたい——めっちゃわかります。
それは服やカバンだけじゃなく、家全体に通じていること。普通に置いていても美しいと思えるものなら、収納の中に無理やり隠さなくていい。
押し入れにもドアがありません。ゆくゆくカーテンでゆるく仕切る予定だそうですが、ほぼ見える状態。がっつり扉で隠す形にはなっていない。扉を付けるのにもお金がかかるので、コストの意味でもミニマムに。
節約にもなるし、そのまま見せられるし、置くものも厳選するようになる。隠せないから、ぎゅうぎゅうに詰めようという気にはならない。
寝袋生活は今もされていて、ソファベッドの上に寝袋を敷いて寝る。我が家と同じ、グレーのソファベッドで寝るスタイルです。
フェルト生地のバッグは前の部屋でも使っていたもので、この中が収納。捨てないと決めている思い出系のものと捨てられない書類、真ん中が季節外の服、一番向こうは災害用のストックをこのバッグひとつにまとめたい、という部分。
非常用トイレがトイレットペーパーサイズで入っています。熊本なので、防災まわりは充実させている。
キッチン:ワゴンで作って、その場で食べて、すぐ洗う。ダイニングテーブルはいらない
キッチンのこれはワゴン。使わないときは壁に寄せておけば真ん中を広く取れて、使うときは引き出して、冷蔵庫の中身をバンバン置いて調理する。中は大容量の収納になっていて、見せたくないものを入れてある。
下はゴミ箱——前の部屋でもファイルボックスでゴミ箱を作っていたのをそのまま使用。上のほうは調味料と、キッチンのタオル。普通はこの辺に掛けるであろう、生活感丸出しになるタオルを見せたくないので、普段見えない場所に掛けている。
調理中は縦に置いて、ご飯を作り終わったら必ずこっちに移動させる。スツールを置いて、窓の外を見ながらご飯を食べる。「私、ダイニングテーブルいらない派の人で、キッチンでご飯を食べたい人なんです」。
作って、この場で食べて、洗い物をすぐ置く。ここで完結するのが理想。調理台にも作業台にも食べるテーブルにもなって、中にはモノが入って、食べながら空になった食器をポイポイ入れていく。
ズボラな人がフライパンを皿にしてキッチンで食べるのを、おしゃれにしたもの——「ちょっとこざれた感じにした」そうです。
引き出しは真ん中だけ。上にはリンナイの、縦に2口のガスコンロ。普通は横に2口ですが、あえての縦2口。そんなにバンバン料理をするわけではないので、横に並ぶと作業スペースが狭くなるから縦のほうがいいと言われて、大正解だったそうです。
プロジェクターはここに置いて前の壁に映す。一番ぴったりな場所。ワンルームで一体化されているから、キッチンだろうとプロジェクターを置いていい。キッチンにおしゃれな間接照明が付いていて、バルミューダも食器も美しい。
形がきれいなものはそのまま見せておけばいい。
どうしてもキッチンにはそれ以外のこざこざしたものがあるので、そういったものは下に。上から下に開く収納に、防災用の水のストック、食材のストック、真ん中が食器、保存容器や計量カップ、もうひとつの鍋。
かなりこだわりを感じるキッチンでした。
リビング:約51万円のソファベッド。「大きくて目立つものに、がっつり予算を」
最後、ここが一番変わりました。ソファベッドと、ペンダント照明。レイアウト的には前の301号室を彷彿とさせます。前の畳ベッド同様、脚が浮いているので掃除もしやすい。ブランドはリーンロゼ。
昔からある名作家具で、フラットで背もたれがなく、できるだけコンパクトで、木目が入っていないもの——そういうデイベッドをずっと探していてヒットしたのがこれ。僕も実はこれ欲しいなと思って見ていました。
背もたれも肘置きもないほうが、部屋が広く見える。普段はここに寝袋を敷いて寝ている。
お値段は、楽天で普通に買ったら51万くらい。
「大きなものほど部屋の中で目立つので、それがチープだと部屋全体もチープな感じになってしまう。数はいらないので、大きくて目立つものは、がっつり予算をつぎ込んだほうが部屋もグッといい雰囲気になりやすい」。少数精鋭の考え方です。
観葉植物と、コードジュエリー。コンセント配線はごちゃごちゃしやすいけれど、配線ボックスにコードをぶち込むか、隠さずそのまま出すかの二択。見た目的にかわいらしいので、あえて見せる。奥にはスマートスピーカー。
この家は基本的に音声で操作できます。
最後は飾り棚。前の部屋だとレイアウトの一番奥に押し入れがあったのに近いイメージで、上は植物とフレグランスと雑誌、下は扉を付けてもらって収納に。
スピーカー、防災用のポータブル電源(熊本なので)、貴重品、文具、スキンケアと薬のストック、工具。この収納は無印良品で、この部屋に来てから新たに買ったもの。「シンデレラフィットってこういうことなんだ」というくらい、本当にぴったり。
まだ残りの工事がいくつかあって完成はしていませんが、スッキリした空間です。
インタビュー:熊本地震でモノを減らし始めて、「安いから」で買わなくなった
——モノを減らし始めた経緯を改めて教えてください。
「熊本在住で、熊本地震を8年前に経験しました。それでモノを減らそうと思って、減らし始めて現在に至ります。揺れたことで、高い位置で扉の中に収まっていたものが全部落ちてきて、足の踏み場がなくなった。
汚部屋ではなかったし汚いわけでもなかったけれど、詰まっていたものが落ちてくると『こんなにモノを持っているんだな』と再確認できたし、単純に危ないということにも実体験として気づけた。
『使っていないけど』『とりあえず』『いつか使うかも』という気持ちで残しているものを、できるだけ減らして暮らしたいなと思いました」
食器を低い位置に置くとか、防災まわりを充実させているのは、震災の経験を活かしているからですね。
「最近気がついたのが、20代の頃の自分はモノをバンバン買うタイプではなかったんです。値段が高くても頑張ってお金を貯めて、本当に欲しいと思うものを買うスタイルで暮らしていた。
それが一人暮らしになって自由が利くようになって、正社員になってお金が入るようになったら楽しくなっちゃって、買い物をして色々溜めてしまった。それが地震で崩れ去って、また以前のスタイルに戻ったんだな、と。
私はそもそも『安いから』『お得だから』で買い物をするタイプじゃなかったんだな、と改めて気がつきました」
僕もそう思います。モノが増える理由は「安物買いの銭失い」で、セールで安いから、ポイントが何倍付くから、と買う。それは自分が欲しいからじゃなくて、お得だから買っている。本質的に自分が好きではないものを買っている可能性が極めて高い。
高くても買うものは本当に好きだから買うので、気持ちが変わることもない。値段が高いものを買っていればリセールバリューも残るので、いらなくなったときにいい値段で売れることが多い。安いものを買うメリットはそんなにない。
「前に使っていた畳ベッドも値段が高くて、なかなか勇気のいる買い物でしたが、2年くらい使って、結果的にフォロワーさんにまた使ってもらえることになって売ることができました。しかも買った値段より高く売れてプラスになりました。
今の定価が上がっているので、価値が上がっているぶん売る値段も上がる。何気ない買い物をしてしまったことで時間をムダに使うのは、避けたいなと思います」
さっきさらっと「50万円くらい」と言ったソファベッドも、どんな家具にしようかと本当に考えて、お店も見に行って、これが欲しいと決めて買ったもの。万が一手放すとなっても戻ってくる金額がそこそこあるのはメルカリを見ればわかる。
何年使っていくらで売れるなら、レンタル料はいくら、と考えれば、そう高い買い物ではない。
「モノが増えがちな人は、所有欲が満たされないような買い物をしている。本当に妥協せずに買えば『これがあるから他はいらない』となって、他のものが目に入らなくなる。
買う前はめちゃくちゃ調べるけれど、買った後は『もっといいのがあったんじゃないか』と探すことを一切しなくなる。
本当に欲しいものを買っていないと、延々と探し続けて、企業は上手いものだから所有欲をかきたてる宣伝やポイント何倍につられてまた買ってしまう悪循環に入る。
『これでないと嫌だ』というものを買いさえすれば、次を探すことはないので、その罠に引っかかることもない」
まさに僕がミニマリストになってよかったことも同じで、量より質で買い物をするようになるから、本当に欲しいものにちゃんと資金を貯めて買えるようになった。お金をパラパラばらまかなくなるから、手元に残るからこそ買える。
なぜ賃貸をリノベしたのか:「不動産を持ちたいんじゃなく、リノベがしたいだけだった」
——そもそも、なぜ引っ越しを? 前の家はめちゃくちゃ長く住まれていましたよね。
「13年住んでいて、そもそも引っ越しする気はなかったんです。
InstagramerさんやYouTuberさんは割と引っ越しをバンバンされる方が多いですけど(僕も年1くらいです)、私は全然そういう気持ちはなくて、すごく気に入って暮らしていた。
でも立ち退きになってしまって、『いついつまでに出ていってください』と言われて、いたしかたなく新居を探すことになりました」
僕も前に住んでいた、めっちゃ気に入っていた家が立ち退きで「半年以内に引っ越してください、引っ越し費用は全額出します」ということがありました。それと一緒ですね。
「当初は分譲マンションを購入してリノベーションしたいと思って物件を探していたんですが、なかなか条件に合うところがなくて。
3月末までにと言われているのに12月末ぐらいまで何も決まっていなくて、タイムリミットは絶対に動かないから本気でやばいと思って。『とりあえず賃貸でもいいかな』と切り替えたところでトントンとここが決まりました。
私、リノベーションは買わないと、自分のものにしたものじゃないとできないと思っていたんです。でも、買いたいわけじゃない、不動産を持ちたいわけじゃなくて、私はリノベーションがただただやりたいだけだったのに、物件を買おうとしていた。
だから話が進まなかったんだな、と」
たまたま、賃貸でリノベーションやDIYができる、原状回復の義務がない物件を、設計をお願いした方に紹介してもらった。「めっちゃいいやん」と思って、内見に来て次の部屋はここにしますと決めた。
「賃貸リノベーションをやりたいと思った人は探してもらえるといいんですが、結構ハードルは高いと思います。物件を見つけることもそうだし、見つけたとして、じゃあ誰が設計して誰が工事をしてくれるのか。
そのツテがあるならいいけれど、ないと『できるはできるけど、その先どうしよう』となって結果できない、ということのほうが多分多い。
ただ選択肢として、絶対マイホームを買わないとデザインできないかというと、そんなこともなくて、現状賃貸でできているから、ちょっと検討してみては、という感じですね」
引っ越しも無事にできてよかった。本当にありがとうございました。apartment301さんのお家はInstagram(@apartment_m301)から見られます。
なお、尺の関係でYouTubeに公開しきれなかった1時間10分超えのロングバージョンのルームツアーは、しぶのLINEに登録して「アパートメント」とメッセージを送ると受け取れます。
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▼ 動画版はこちら
YouTube版のタイトルは『【ルームツアー】ミニマリストが設計した賃貸リノベ。家賃35000円のワンルームがモノを減らすとここまで快適に。』です。ドアのないお風呂やキッチンワゴンの動き、部屋の空気感は動画のほうが伝わります。
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