インスタグラムでずっと見ていた部屋があります。@apartment_m301さん。プロフィールには「持たない暮らしを実践しています」と書いてある。
畳のベッドとモダンな床の組み合わせが、どう見てもおしゃれで、気になるアイテムだらけでした。
純粋に僕がこの部屋を好きで見ていたので、お声がけしてルームツアーをさせてもらいました。住んでいるのは熊本。僕は福岡なので、お隣です。YouTubeで顔を出すのは今回が初めてだそうです。
築古の賃貸ワンルーム、25㎡。そこにどうやってこの空間を作ったのか、そしてなぜ持たない暮らしを始めたのかまで聞いてきました。
玄関:鍵を持たずに開く。壁に穴を開けないAesopの飾り方
間取りはワンルームで、玄関から部屋が直接つながっています。入り口すぐに水回りが集結しているタイプ。25㎡なのでコンパクトです。
まずドアで目に入ったのが、スマートロックのQrio Lockでした。
GPSで玄関の前に立つと勝手に開く。鍵なしで手ぶらのまま帰宅できるので、ミニマリストで使っている人は多いです。僕も便利さはよく分かります。
玄関には赤い枝物のお正月飾りと、Aesopのボトル。今年用意したお正月飾りは、これ一つだけだそうです。
Aesopを置いている棚が気になりました。本来なら壁にがっつり穴を開けて取り付けるものですが、賃貸なのでそれができない。そこで石膏ボード用のフックで留めているそうです。
ちなみに、賃貸に画鋲程度の穴を開けるのは法律上は問題ありません。それでもここは、ネジの跡を埋める処理までしてありました。よくよく見ないと分からないレベルです。
トイレと洗面:人感センサーと、ステンレスで揃える
トイレは人感センサーで点灯します。床は張り替え済みで、トイレはフロアタイル、部屋はクッションシートと使い分けているとのこと。似ているけれど別素材です。
ペーパーホルダーも交換していて、素材はステンレス。キッチンのステンレスと合わせてありました。この家、細部の素材が全部つながっています。
床にモノを置かないと、掃除は「思い立った瞬間」にできる
ホコリは寝ている間に床に落ちて、人が動き出すとまた舞い上がる。だから起きてすぐが一番床にホコリが溜まっているタイミングです。彼女は起きたらすぐ、部屋全体をワイパーで拭くそうです。
これができるのは、床にモノがないから。しかも家具が全部脚付きなので、下を通してそのまま一番奥まで行けます。
「どかさないと掃除できない、どかしたら戻さないといけない。それがめんどくさくて、結果しない」。減らす前はそうだったと言います。今は思い立った瞬間にサッとできるので、苦にならない。掃除したくなる部屋です。
ワイパー自体もデザインのいいものを選んでいました。よくあるプラスチックのものは安っぽく見えるけれど、これは適度な重みがあって拭きやすいそうです。
キッチン:天板には何も置かない。家電はバルミューダで揃える
まず驚いたのがガスコンロ。リンナイの「Vamo.(バーモ)」で、グリルがありません。グリルがないから掃除が楽だし、排気口もないので天板が完全にフラットになります。それでいて中華鍋を振れるくらい火力は強い。
高さもシンクとぴったり合っていました。
シンクには浄水器。ここから水を汲んで飲んでいるので、ウォーターサーバーは要りません。
天板の上には何も置かない主義です。「置きません」と即答されました。代わりに手洗い用のハンドソープとハンドローションを、デンマークのFRAMAで揃えて棚に。ガラス瓶が綺麗だから、という理由でした。
スマートディスプレイは、朝起きる時間になると自動的に喋り始めるほか、エアコンや照明の操作にも使っています。リモコンが要りません。
隣にはバルミューダのBALMUDA The Pot。
レンジもバルミューダでした。理由が面白くて、このレンジの取っ手と、ポットの取っ手のシルバーがリンクしているから。ブランドで揃えているのではなく、取っ手のディテールで揃えているわけです。
収納:食器は引き出しに入るだけ。ゴミ箱は無印のボックスで4分別
吊り戸棚を開けてもらいました。「ここを見せると、結構モノがあって安心するって言われます」。
ポイントは、上に置くのは基本的に重くないものだけにしていること。落ちてきても大丈夫なように、という理由です。後で聞く「災害をきっかけにモノを減らした」という話と、しっかりつながっていました。
シンク下は、無印良品のボックスに合わせて木を買ってきて、木工用ボンドで留めただけのDIY収納。この家、床材も含めてかなりDIYされています。
生活感のあるところも見せてもらいました。ゴミ箱は無印良品のポリプロピレンのファイルボックスで、プラゴミ・燃えるゴミ・資源ゴミ・生ゴミの4分別。市販のゴミ箱は一人暮らしには大きすぎて置き場所に困る、というのが理由です。
ここに収まるサイズは市販品では見つからない。
その下は食器の収納で、入るだけしか持たない。来客用の食器は一切ありません。コップは3つあるので、飲み物を出すくらいなら対応できる、とのことでした。
冷蔵庫の横に付いていたスイッチを押させてもらったら、照明が点きました。ケーブルの配線も電池も入っていません。Philips Hue(フィリップス ヒュー)というスマートライトの付属スイッチで、照明側に本体が仕込まれています。
押し入れ:服は15〜20着。夜のスキンケアは、この中でする
押し入れを開けてもらったら、想像していたよりスカスカでした。「これで全部ですか?」と聞いたら、これに夏物が加わるくらい、とのこと。全部で15〜20着を行き来していて、20着はいかないという感覚だそうです。
中は普通の押し入れですが、壁紙を自分で貼り替えてあります。突っ張り棒で服を吊るし、下着類は無印良品の「吊るす収納」へ。これは僕と同じでした。
僕が一番気になったのが、クローゼットの中に間接照明があることです。なぜここに置くのか聞いたら、理由がはっきりしていました。
夜はここでスキンケアをするから。目の前に鏡があって、照明があって、ちょうどいい高さにスツールがある。座ると本当にドレッサーになりました。ケーブル配線がないポータブルタイプなので、この使い方ができます。
置き場所にちゃんと意味がある。この部屋、全部そうでした。
机を置かない。スツール1つを、椅子にもテーブルにも脚立にも
この部屋、机がありません。「ご飯どこで食べるんですか」とよく聞かれるそうです。
昔は畳ベッドに座って、スツールをテーブルにして食べていた。今は椅子が来たので、椅子に座ってスツールをテーブルにしている。カフェみたいなスタイルです。
なぜそこまでして机を置きたくないのか。答えが明快でした。
「テーブルって、テーブルとしてしか使えない」。でもスツールなら、座ることもテーブルにすることも、脚立のようにも使えるし、立てて飾ることもできる。単体の機能しか持たないものを、わざわざ一つ買わなくていい。
もう一つのこだわりが、背の高いものを置かないこと。部屋が狭いので、高いものを置くと生活感が強調されてしまう。テーブルはどうしても高さが出ます。だからロースタイルで通しているわけです。
寝るときは、スノーピークの寝袋を広げるだけ。僕も同じものを2枚重ねて使っているので、思わず盛り上がりました。彼女も寒いので2枚に増やしたそうです。寝袋にもなるし、広げれば布団にもなるし、クッションにもなる。片付けが本当に楽です。
その隣には、いつもストックしている防災用の水。スキンケア用品や薬は、ここも木を買ってボンドで留めたDIY収納にシンデレラフィットで収まっていました。
縦に張れる突っ張り棒に、ハンガーを掛けるパーツが付いていました。DRAW A LINE(ドローアライン)という商品で、通称「世界一おしゃれな突っ張り棒」。
僕の友達も何人か使っていますが、みんな黒でした。白は初めて見ます。「白だと壁に溶け込んで、存在感が出すぎない」。突っ張り棒は置くと存在感が出てしまうものですが、白なら部屋に馴染んでくれる、という選び方でした。
部屋の主役、宙に浮く「畳ベッド」
ここからがメインです。僕がインスタグラムでずっと見ていた眺め。畳のベッドと椅子と窓。
この畳ベッド、床から浮いています。YouTuberの「建築家二人暮らし」さんが開発した商品で、クラウドファンディングで発売されたものを購入したそうです。サイズはセミダブル。
座らせてもらうと、小上がりのような感覚でした。来客のときはここに座ってもらえるし、疲れたらそのままコロンと横になれる。
普通のベッドは、夜寝るときにしか使えません。でもこれなら、上の布団を片付けてしまえば昼間も使える。さっきの寝袋と組み合わせると、出し入れが本当に簡単です。
ミニマリストの部屋は床面積を広く取る考え方があるので、どうしても冷たい印象になりがちです。でもグレーの床にこれを置くだけで、一気に落ち着いた、くつろげる空気になっていました。この部屋を象徴する家具です。
名作家具と、光。イサム・ノグチのAKARIとアルテックのスツール60
この部屋が和の空気をまとっているのは、この照明もあってのことだと思いました。畳と照明の組み合わせが本当にいい。
イサム・ノグチがデザインした「AKARI」シリーズです。点けてもらうと、和紙越しの光が部屋に広がりました。
さっきテーブル代わりに使っていたスツールは、アルテック(Artek)のスツール60でした。名作家具と呼ばれる一脚です。
一見どこにでもありそうな形ですが、色味が絶妙でした。
上のグレーの部分はリノリウムという素材で、カラーバリエーションの中からこの色を選んだそうです(Amazonで手に入りやすいのはバーチ材の天板です。動画と同じリノリウム天板は楽天のほうが選べます)。肌触りも良かったです。
同じものが部屋にもう一つあって、椅子の隣に置けばサイドテーブルにもなります。
そして折りたたみチェア。カール・ハンセン&サンのものです(同社のペーパーコードの折りたたみチェアは「MG501 キューバチェア」の名前で売られています)。
畳めます。しかも畳むとかなり薄い。使わないときはしまえて、引っ越しも楽です。こういう折りたためる家具は、機能性が優先されてデザインが弱くなりがちですが、これはしっかりしていておしゃれでした。
お値段は10万円以上、十数万円するそうです。それでも「いいものなので、ずっと使い続けられる。もういらないとなったときでも、売れる」。一つひとつの名作家具を、しっかり愛しながら生活しているのが伝わってきました。
出窓のプロジェクターと、傘立てを転用したケーブル隠し
出窓には4Kのプロジェクター。明るいので昼間でもちゃんと見られて、夜はかなり綺麗に映るそうです。しかもharman/kardonのスピーカーを積んでいるので、音もいい。この部屋でゆっくり鑑賞できるのは贅沢です。
ケーブル配線は専用のボックスで隠していました。市販のケーブルボックスはコンセント部分が見えてしまうのが惜しいところですが、これはそこまで隠せる形でした。
そして横に立っていた筒。傘立てを転用したものでした。これはナイスアイデアです。
こちらはオイルバーナー。中にキャンドルを仕込んで火をつけ、上にオイルを垂らすと香りが立ちます。デザインが本当にシンプルでした。
部屋がシンプルだから、光が映える。光と植物が際立つ部屋だな、と思いました。
カーテンをやめて、ハニカムシェードに
言われるまで気づかなかったのですが、この部屋にカーテンがありません。代わりにハニカムシェードを使っています。
僕はカーテンを部屋に付けたくない人間です。引っ越しのたびに寸法が変わるし、何より生活感が出るのが嫌で。それでこの部屋を見ても、本当に気づきませんでした。
素材は不織布で、ハニカム(蜂の巣)構造になっているので断熱性が上がります。白いので、降ろすと障子のように見えました。畳との相性が抜群です。
本来は窓枠にぴったり取り付けるほうがすっきり見えるし断熱性も高くなりますが、賃貸なのでカーテンレールに取り付けているとのこと。それでも、降ろすと部屋が真っ白な箱のようになって、印象が変わりました。
きっかけは熊本地震。食器の9割が割れた
ここからは、なぜ持たない暮らしを始めたのかを聞きました。
「きっかけは震災です。熊本地震を、まさしくこの部屋で被災したのが一番大きかったです」
最初に捨てたのは、壊れたものでした。ありとあらゆる扉が開いて、モノが全部落ちてきた。足の踏み場がない部屋というのはこういうものなんだ、とその時に経験したそうです。当時は今よりモノの量が多かった。
具体的に何が壊れたのかを聞きました。今、冷蔵庫があるところに無印良品のカップボード(食器棚)があって、上の方に置いていた食器が全部落ちて、9割方が割れたそうです。
「食器が落ちると、部屋の端っこあたりからでも破片が出てくるんです。掃除しても掃除しても、どこからか破片が出てくる。こんなに飛び散るんだな、というのがあって」
そこから学んだことが、今の収納にそのまま反映されています。割れるものはたくさん置かない。高いところにも置かない。だから今は下の方に、しかも箱の中に入れて収納している。
飛び出しにくいし、もし飛び出さずに箱の中でぶつかって割れるなら、それはまだいい——そこまで考えた結果が、あの引き出しでした。
減らしていくうちに、今度は色を減らしたくなった。色を減らすために床を張り替え、パッケージの皮を剥がし、そうやって現在の部屋になっていったそうです。
「ミニマリスト」という言葉自体は、モノを減らすためにネットでかなり検索する中で知ったとのことでした。その検索で僕も出てきたそうで、本も読んでくださっていました。
モノを減らしてよかったこと:掃除のしやすさと、決断力
最後に、モノを減らしてよかったことを2つ挙げてもらいました。
1つ目は、掃除がしやすくなったこと。「今までは、どかさないと掃除できない。どかした後、また戻さないといけない作業が発生する。それがめんどくさくて、結果しない」。
今は何もどかさずにすぐできるので、思い立ったら、ちょっと気になっただけでもサッと掃除できる。きれいな部屋が保てるようになったそうです。
2つ目は、決断力が上がったこと。いる・いらないを繰り返していると、取捨選択が鍛えられます。
「これが嫌だ、これがいい、というのがすごく分かりやすくなった。自分がどんなのが好きで、どんなふうにやりたいのかが、よく分かるようになりました」
人生は、何を食べるか、誰と付き合うかまで含めて取捨選択の連続です。モノを減らすと、自分の価値基準がはっきりします。
モノを減らすのは、究極の自己理解だと僕は思っています。削って削って残ったものが、自分の大事なものだから。それが分かっているからこそ、こういう家具の選び方ができるんだと思います。
25㎡のワンルームで、机を置かず、カーテンも持たず、それでもこれだけ豊かに見える部屋でした。この部屋のもっと細かいところは、Instagram(@apartment_m301)で発信されているので、ぜひ見てみてください。
この記事で紹介した持ち物リスト
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