今回のお片付けの依頼者は、みーさん(48歳)。看護師として働きながら、愛犬のプリンちゃんと2人で暮らしています。「過去一モノが多そうで、癖が強そうな方のお家」と聞いて向かったのは、ゴミ屋敷一歩手前のワンルーム。
なんとこの企画に2回も繰り返し応募してくれた熱量の持ち主です。
結論から言うと、2日間・計13時間の片付けで、70リットルのゴミ袋28袋が出ました。そして部屋は「ホテルみたい」な空間に生まれ変わりました。この記事は、その一部始終をブログ用に再構成したものです。
「余白ないっすね」から始まったルームツアー
玄関を開けた瞬間、正直に言いました。「匂いが結構きついですね」。ここ2日間で犬のいるお家を2軒回りましたが、一番強い。本人は自分の部屋の匂いに慣れて気づけなくなっていました。
ベッドの上はモノの山で、寝るスペースは半分だけ。冷蔵庫の上は物置になり、コンロの上はモノで埋まって料理ができない。まな板置き場もありません。
玄関の収納も、シンク下も、開ければモノがなだれ込んでくる状態です。
吊り戸棚にはスターバックスのカップコレクションがずらり(本人いわく「これでも半分以上減らした」)。洗濯機の上は開かずの物置で、水回りには枯れかけの植物とお菓子が同居していました。
ソファも、クッションとモノの山に埋もれてもう座れません。
部屋を見渡して「余白ないっすね」と言うと、みーさんは棚のわずかな隙間を指して「余白、ここ」。……それは余白とは言いません(笑)。
なぜ、捨てられなくなったのか
片付けを始める前に、じっくり話を聞きました。
応募の理由は「終活」でした。 みーさんは仕事で老人ホームに行くことがあります。そこで見てきたのは、退去後に残された大量の荷物と、遠方の家族が「全部処分してください」とやり取りする現場。
「50を手前にして、最後くらいは誰にも迷惑をかけないように」——それが2回も応募してくれた理由です。
実は、みーさんは一度ミニマリストになっています。東日本大震災の津波の映像を見て「自分の中で冷めてしまって」、ゴミ袋20袋分を一斉に手放した。バカラのグラスも売って、ソファもベッドもない床生活までいったそうです。
そこから逆戻りしたきっかけは、同僚の「モノに囲まれた方が癒されるよ」という一言と、家具屋さんで一目惚れしたソファ。そこから収集癖が再発し、「訳が分からない状態」まで増えました。
もうひとつ、大きな心のブレーキがありました。昔1万円で手放したシャネルのバッグに、今120万円のプレミアがついているんです。
「あれを手放さなければ」という後悔から“手放す不安症”になり、明らかに不要なものまで全部置いておくようになった。
でも、冷静に考えてみてください。シャネル以外をちゃんと手放していれば、大事なシャネルは管理できていたはずなんです。自分が管理できる量まで減らすことが、大事なものを守ることになる。
片付けは「明らかなゴミ」から始める
「どこから片付けたらいいか分からない」という人は多いと思いますが、この状態から「自分にとって大事なもの」の話はしません。まず明らかなゴミから減らします。
順番はこうです。
1. 明らかなゴミ(空箱、保冷剤、通電しないケーブル、賞味期限切れ)
2. 買い直しがきくもの(最悪、また必要になったら買えるもの)
3. 思い出の品は一番最後(判断のエネルギーが一番要るので)
そして迷ったときの合言葉が「迷ってるものは、いらない」。本当に必要なものって、迷わないんですよ。
この方針で進めると、玄関の収納から出てくる出てくる。何も入っていない空箱、「大事に持ってた」保冷剤、かっこいいからとメルカリで取り寄せた英字新聞、コストコで5万円分買ったコロコロの替え……。
そして、ゴミの中から探し続けていた銀行の通帳が全部出てきました。「空き巣に入られたと思ってました」とみーさん。ハンコも、失くしたと思って買い直した指輪も出てきました。ゴミに埋もれて、大事なものが行方不明になっていたんです。
2段空いたところで、みーさんが言いました。「ゴミのために家賃払ってたってことですよね」。その通りです。不要品の分だけ、家賃を払っているんです。
「貧乏人の負のループ」の話
片付けながら、お金の話もたくさんしました。みーさんはコロナ禍で収入が3分の1になり、自己破産を経験しています。電気を止められてロウソクで過ごした時期もある。それなのに——
- お金がないのにUber Eatsを頼みまくって「Uber Eats破産」、体重は38kg増
- 見栄で作ったプラチナカードの年会費14万円(空港ラウンジは一度も使ったことがない)
- 「ポイントが付くから」と楽天セールで不要なものを買う
- お金を引き寄せるという風水グッズを購入(「これを買ってからお金が貯まらなくなった」)
僕はこれを「貧乏人の負のループ」と呼んでいます。散らかった部屋がストレスになる→ストレス発散で買い物する→モノが増えて片付ける余力がなくなる→もっと散らかってもっとストレス……。
「貧すれば鈍する」で、この状態のときは正常な判断ができなくなっているんです。
そして大事なのがこれ。モノの消費は、時間の消費です。 モノは自分が働いて、命を削ったお金で買っている。使わずに捨てたものを買わなければ、そのぶんシフトを減らせたんです。
ちなみに、看護師さんは無駄遣いさえしなければお金が貯まる職業です。実際「ゴミ屋敷の人は意外と年収が高い」という話もあって、買い物ができてしまうからモノが溢れる。
この負のループを断ち切る方法はひとつ、まとまった時間を取って一気に片付けることです。
「売る・譲る」は禁止。原則はこれだけ
「メルカリで売ろうかな」「職場の人に譲ろうかな」——片付け中に何度も出てきましたが、僕は全部止めました。原則はこうです。
- 大量なら、捨てる(今のみーさんはここ)
- 大型なら、譲る(ジモティなら粗大ゴミ回収より早い)
- 少量まで減らし終わって、高価なものだけ、売る
モノが大量の段階で売る・譲るをやると、いつまで経っても片付きません。「高く売れるかも」と欲を出すと、100点の売り時を待って永遠に後回しになる。売るときには欲を出さないが鉄則です。
実際、みーさんの家には10万円相当のヴィトンのバッグが「今年こそ売ろう」と雑誌に折り込まれたまま眠っていました。クリーニング代を払い、メルカリの値下げ交渉に怯え、持っているだけでコストを払い続けていた。
相談の結果、その場でブックオフ行きが決定。「2〜3万にしかならなくても、モヤモヤ代を考えたら手放します」と言えたのは大きな成長です。
モノには「住所」がある
キッチンは、一度全部出して見える化しました。1日1捨てでは変化を感じられませんが、全部出すと「何をどれだけ持っているか」が一目瞭然になります。
出てきたのは、賞味期限が1年以上切れた食材、「ピンクだから」という理由で買った塩、同じ用途の調理グッズの山、そしてトイレの中からはなぜかコンバースのスニーカー。キッチンの棚には未開封の薬もありました。
僕は「モノの住所」と呼んでいるんですが、使うモノには必ず定位置が定まります。薬はお薬ボックスへ、靴は玄関へ。モノがあるべき場所にない部屋は、使っていないモノで住所が埋まってしまっている部屋なんです。
洗面所も同じ要領で、2人がかりで一気に仕分けました。鏡が見えるようになったとき、みーさんが言った一言が最高でした。「お、私の顔が見えた」。
ここで面白い発見がありました。食器を仕分けていると、みーさんは無印良品系のシンプルなグッズをどんどん捨てて、柄物の可愛いグッズを残すんです。だから僕はこう伝えました。「みーさんは今後、シンプルなものを買わない方がいいです」。
ミニマリスト=無印良品みたいな憧れがあると思いますが、実際に使い続けられるのは自分がテンションの上がるモノ。人によって正解は違います。
いちばん重かった、母のお土産
洗面所で手が止まりました。母親が海外旅行で買ってきてくれた、2万円近いネックレス。「いらないよ」と伝えていたのに買ってきてくれたもので、趣味じゃないから使わない。でも捨てられない。
僕はこう考えます。これは多分、お母さんの趣味なんです。そして、いらないと分かっているのに苦しんでいる姿を知ったら、お母さんも苦しい。 残したままだと、見るたびに気が重くなるコストを払い続けることになる。
みーさんは「お母さん、ありがとう」と言って手放しました。七五三の着物も、お母さんが手編みしてくれたセーターも、「今後家族に迷惑をかけない」という終活の原点に立ち返って手放しました。動画に記録が残ったから、思い出はそこにあります。
そして名言が生まれます。「自己満足のお土産ほど、迷惑なものはない」。モノを贈るより、一緒に美味しいご飯に行く方がいい。これはプレゼントをする側にも刺さる言葉だと思います。
ベッドの上のモノの山も、ひとつずつ「いる・いらない」を仕分けていきます。IKEAの青い袋とゴミ袋が、みるみる埋まっていきました。
クローゼットを開けたら、意外とミニマリストだった
夜9時、最後のクローゼットへ。「ここから長丁場か…」と覚悟して開けたら——意外と服が少ない!
紙袋の山(シャネルの空箱含む)を処分したら、残った服はオールシーズンでわずか10着ほど。女性ミニマリストの発信者でも「20着以下なら少ない」と言われる世界で、これは僕と同じくらいの少なさです。
理由を考えると納得でした。みーさんには「ピンクが好き」という明確な価値基準があるんです。基準があるから、服だけは無駄に増えなかった。ミニマリストに憧れて買ったシンプルな服の方こそ「自分っぽくない」と捨てることになりました。
かつてイッセイミヤケを40着持ち、ブランドの歴史を語れるレベルだったみーさん。全部手放して燃え尽きたいま、残ったのは「色がピンクであること」だけ。それでいいんです。
ミニマリスト=モノトーンやシンプルである必要はない。 モノを減らして際立ったのは、みーさんの個性でした。
ここに「ピンクミニマリスト」が誕生しました。
2日間で、ゴミ袋28袋。部屋はホテルになった
1日目は10時間。僕が帰った後も、みーさんはスイッチが入って深夜1時半まで一人で片付けを続けました。翌朝、部屋の前に積まれていたのは70リットルのゴミ袋、計28袋。ワンルーム1室分の不要品です。
そしてAfterです。ボタンで切り替えて、同じ場所のBefore→Afterを見比べてください。
玄関収納
靴は5足だけになり、全部靴箱に収まりました。
キッチン
冷蔵庫の上は炊飯器とクリスマスの飾りだけになりました。
洗面所
「この家の中で一番心が洗われる場所」になりました。
寝室
ゴミでセミシングル化していたダブルベッドが復活しました。「もうホテルじゃないですか」。
ソファ
クローゼット
白い空間にピンクの服がずらり。「毎朝クローゼットを開いて深呼吸してます」とのことです。
ベッド下の収納も整えて、部屋の完成です。
「自分の人生の主人公になりましょう」
片付けの途中、ゼクシィの山(結婚も決まってないのに複数冊)を前に、みーさんがぽつりと言いました。
「途中から思ったんですよ。自分の人生も、ブログ(他人の発信)みたいになるなって。ブログに脅かされて、誰かのブログみたいな人生になってるなって」
だから僕は言いました。「自分が主人公になりましょう」。
この企画に応募して、部屋も顔も全部公開できる胆力は本当にすごいことです。恥を晒せる人じゃないと、人は成長しない。笑われるのが恥ずかしくて行動しない人は、何も変わらないまま。今日が人生で一番若い日ですから。
翌朝、みーさんはこう言ってくれました。
「1日ちょっとで、こんなにも空間が変わるのかって感動しました。頭の中もごちゃごちゃしていたのが、空き容量ができて、考え方にも気持ちにも余裕が生まれて。自分の人生を取り戻せそうな予感しかしない」
筋トレも勉強も、成果が出るまで年単位でかかります。でも片付けだけは、たった1日の短期集中で人生が変わる。お金も貯まるし、時間も生まれるし、ストレスもなくなる。
だからこそ、土日や連休、年末年始を使って一気にやってほしい——これが僕の願いです。
後日談:ソファーの裏から出てきたもの
後日、イベントでみーさんと再会しました。「ミニマリストになると痩せる」の法則に反して体重は人生最高値を更新していましたが(笑)、片付いた部屋は維持できているそうです。
タンパク質をしっかり摂ると食欲が落ち着きやすい、というアドバイスも送っておきました。
そして最後に、みーさんから届いたビデオレターがこちら。
「ソファーの後ろを掃除しようと思ったら、とんでもないものが見つかりましたので、ご報告しておきます。この袋を大切になぜか隠していたのですが——まさかの、わさビーフが入っておりました。以上、報告でした」
最後まで最高でした。みーさん、ピンクミニマリストへの道を歩んでいってください。
あなたの家も片付けます。 僕に自宅を片付けてほしい方は、動画の概要欄から応募できます(顔出し・部屋を公開できる方のみ・無料)。全国どこでも行きますので、遠いからと諦めずに。
めげずに2回応募したみーさんのように、行動した人から人生は変わります。
僕の片付けの考え方は、著書『手放す練習』と『手ぶらで生きる。』にまとめています。
▼ 動画版はこちら
YouTube版のタイトルは『「ミニマリストに憧れるけど…」捨てられない女性の自宅へ。モノ減らしたらゴミ屋敷もキレイに片付いた』。みーさんの人柄と2日間のドラマは、ぜひ動画でご覧ください。
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